2007年12月9日日曜日

アンダルシアのLos Pueblos Blancos(白い村)


アンダルシアのLos Pueblos Blancos(白い村) で耳にした Vaya con Dios





(Arcos de la frontera)昨年の春Los Pueblos Blancosの呼び名で知られる、スペイン南部のアンダルシア地方にある小さな村をいくつか訪ねました。
小高い丘にへばりつくように立ち並ぶ家々が、どれも壁を真っ白に漆喰で塗り固めてあり、村全体が真っ白に見えるので、この名が付いたようです。

私はもともと運転が苦手な上に、オートマチックの車しか運転できないときていますので、あらかじめセビーリャのレンタカー会社には小型のオートマチック車の確保を申し入れてあったのですが、いざ現地に着いてみると予約した筈の小型車はなくて、オートマチックはボルボ60sが一台あるだけという返事です。訪ねる先は曲がった細い山道が多いと聞いていたので内心困ったなと思いましたが、車なしでは身動きがとれないので、やむなく大きな車を借りる羽目になってしまいました。

セビーリャの町を出て、南に向かうハイウエーを走っているうちは実に快適だったのですが、その日泊まる予定の、中世の雰囲気を感じさせる城塞都市アルコス・デ・ラ・フロンテラへ着いたら、丘の上のホテルに通じる石畳の道の途中に、左右のミラーが触れそうなぐらい狭い石造りのトンネルがあり、まずそれを潜り抜けるのにひと汗かいてしまいました。歩道車道の区別なんてない石畳の町ですから、沢山の通行人をよけながらやっとのことでホテルにたどり着いた、という感じでした。

Zahara de la Sierra


アルコスには3泊してそこを拠点に、あちこちに点在するPueblos Blancosをいくつか見て回りました。途中で山羊の群れが道路を横切っているところに出くわして、仕方なく車を停めて山羊が通り過ぎるの待ったり、というのんびりしたひと時を過ごしたあと、Zahara(サハラ)村に着きました。
車を坂の下に止めて村の坂道をあえぎながら登っていた時、いまどき田舎でも珍しいまるで歌舞伎の黒子みたいな黒装束の老婦人とすれ違ったので、''Hola''と気軽に挨拶をしたら, '' Vaya con Dios ''(バイヤ・コンデイオス) という返事が返って来たので、私は一瞬あっけにとられて、すたすたと坂道を下って行く老婦人の後姿をいつまでも眺めていました。

確かにむかしスペイン語の授業で、Vaya con Diosは古い言い回しの別れの挨拶である、と習ったのは記憶にあります。私がスペインで暮らしたのは、フランコがまだ生きていた時代を含めて10年近くになるのですが、一度もこの言葉を耳にしたことはありませんでした。その後も何回かスペインを訪ねていますが、実際にこの挨拶を聞いたのは今回が初めてのことでした。そのあとコーヒーを飲んでひと休みした時に、村のバーの主人に尋ねたら、まだ年配の女性の中には古風な挨拶をする人がいるんですよ、と笑っていました。
私は四国で瀬戸内海を眺めながらのんびり育ちましたが、夏休みが終わって東京の大学に戻るため汽車に乗ろうと家を出る時、もうその頃は腰の曲がっていた祖母が私を見上げながらいつも口にしたのは、「ほな、気いつけてなあー」でした。Vaya con Diosを耳にしたとき、あの伊予弁のちょっと間延びのした別れの挨拶を思い出したのです。

Grazalema


アンダルシアの人たちの人情の良さ、いわゆるホスピタリテイーについては随分いろんな人から聞いていましたが、私たちがある町で道に迷ってしまい同じところを車で堂々巡りしていたところ、それに気づいた年配の土地の人が自分の車は交差点に放ったらかしのまま小走りにやって来て、「とにかく俺の車にについて来い」と言って、ハイウエーの入り口まで先導して呉れたなどということもありました。
Los Pueblos Blancosは、名前が知られている割にはいわゆる観光ズレしている部分が余り目立たず、スペインの田舎の良さを感じさせて呉れた楽しい旅でした。

Veger

2007年12月1日土曜日

カタルーニャのロマネスク教会-(1)

Sant Pau del Camp教会



バルセロナ市の周辺にはロマネスク様式の教会が沢山ありますが、私がついカメラを向けたくなってしまうのは、11世紀から12世紀頃にかけて、ロマネスクの教会が各地にたくさん建てられた頃の雰囲気を今でも窺がわせて呉れる、質素でしかも小さな鄙びた教会です。そんな教会のいくつかを私のアルバムの中から拾ってご紹介してみようと思います。


Cloister of 13th century




まず第一回目は、バルセロナ市内にあるSant Pau del Camp教会です。
この教会は観光案内書にも載っていますので、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、観光客でいつもごった返しているRambla通りから、西の方角に向かって10分くらい歩いた住宅地域にあります。
教会の名前はカタルーニャ語で「町外れの聖パウロ教会」という意味です。当初は修道院としてバルセロナ旧市街の城壁の外、つまり町はずれに建てられた為、それが呼び名に結びついたものでしょう。今ではアパートがびっしり立ち並んでいる教会の周辺も、その当時は一面に麦畑だったり、放し飼いの羊が群れていた人里離れた場所でした。今は目抜き通りになっているRamblaも、その頃は川だったそうです。

この教会の特徴は、バルセロナ市内では数少ないロマネスク様式を保つ古い教会だということ、それに加えて、今でも市民のための教会として活動を続けているということです。私の友人の一人も、むかしこの教会で結婚式を挙げました。


Cloister

この回廊の写真は今から7年前に撮ったものです。
Sant Pau del Camp教会はその頃は一般公開の時間がごく限られていて、訪ねても中に入れないことがよくありました。その日はちょうど10人くらいの年配の信者相手にミサが始まったところでしたが、この教会の見どころは回廊(13世紀の作)なので、すぐ忍び足で右横の扉をくぐり回廊に出て何枚か写真を撮りました。
回廊の内側は飾りに植木鉢がいくつか置いてあるだけの実に質素なもので、当時は観光に訪れる人も少なく、カメラのシャッター音と自分の靴音が気になるほど、実に静かな雰囲気でした。

ことしの春久しぶりで訪ねた時には、観光客用の入り口が新設されいつでも回廊を見ることが出来るようになっていました。ただし、入場料を取られるのはいいとして、あの質素な回廊の内側がまぶしいほど真っ白な割り石で一面に覆われ、石畳が見えなくなっていたのには驚きました。太陽光線にぎらぎら輝く割り石の床は、薄暗い回廊の雰囲気にそぐわなように思いますが、いったい誰が考えついたことなんでしょう。その意味では、私の古いデジカメ(Canon G2)の写真にも歴史的な価値があると思っています。

その起源を10世紀頃にまで遡る古い歴史を持つSant Pau del Camp教会は、バルセロナ市内で手っ取り早くロマネスク教会を見るには便利な場所です。