2021年1月7日木曜日

 

Walkman物語(2) ZX300Nobunaga Labsのバランス・ケーブル 

 Nobunaga Labsの「Kagemitsu S」をShure 846につないでみた。(‘’Kagemitsu-S’’ Balanced Cable for Shure 846)

(for summary in English please see the end of this page)


(ZX300 & Nobunaga Labs Balanced Cable ''Kagemitsu-S'' on Shure SE846)

私はタッチパネル方式の操作が苦手な上に、Walkmanで聴くのは1950-60年代のクラシック音楽が主体なので、もともと音源の質に限界があることなども考慮すれば、価格・使い勝手・音質の総合評価では、ボタン操作のWalkman ZX100がベストだと考えていた。そして在庫が無くなる前にと、ZX1002台目を買ったりもした。

 Walkman ZX300はなかなか評判のいい製品だが、タッチパネル操作のほかに、なじみのないバランス・ケーブルが必要というのも、手をだしかねる理由のひとつだった。とくにバランス・ケーブルはピンからキリまでいろいろあって選択に迷うし、手持ちのShure SE846との相性などなど、いろいろ疑問も生じ「めんどうなものには手を出せないな」というのが本音で、私のWalkman遍歴もZX100で終わりかな、と考えていた。

 しかし、新製品のニュースについつい目が行くのが人情というもので、昨年秋にWalkmanについていろいろGoogle検索をしていたとき、「Nobunaga Labs製バランス・ケーブル景光S(Kagemitsu-S) (製品番号NLP-KGM-S)」というのが目にとまった。

Amazon Japanで探したら、値段はあまり高くなさそうだしShure SE846との相性がいい、とのユーザー評価もいくつか目についたので、「ひとつ試してみようかな」という気持ちになった。

 バランス・ケーブルが何とかなりそうな感じになったので、中古美品というふれこみのZX300とあわせ、Amazonでちょっと衝動的な買い物ではあったが、「注文確認」のボタンを押した。ケーブルの価格は¥11,573プラス 1,232 (カナダまでの郵送料)。昨年9月下旬にオーダーしてから、通関を含め1週間足らずで届いた。

 Shure SE846の取り扱い説明書には、ケーブル取り換えについての説明があり、それを参考にしたら簡単に交換できた。すぐWalkman ZX300につないで試聴を始めたが、バランス接続の音は意外にもZX100とあまり変わらない、いささか期待外れのものだった。

ZX300本体は中古品なので、いわゆるbreak-inは終わっているはず。ということはケーブルの問題になるので、「これは失敗だったかな」と一瞬思ったが、それでも毎日一時間くらい聴き続けていると、50時間くらい経った時点でしだいに音がまろやかになり、厚みも増してきた。別の言い方をすると、ZX100ではいかにも収録音の再生という感じだったものが、すっとベールを取り払ったようなすっきりした音になり、じっさいにコンサートホールで耳にする音により近くなったということ。

音質に関しては、確かにバランス接続に軍配があがり、ZX100の出番は少なくなったが、使い勝手の良さでは、まだまだZX100にも捨てがたいところあり。

 「景光S」のワイヤは固めで、さわるとゴワゴワという音が伝わってくる。もし移動しながら聴くときは、気になる向きがあるかも知れない。しかしZX300はちょっと重いので、ポケットに入れて歩きながら使うことは余りないのでは、と言う気もする。

使い始めていま100時間ぐらいすぎたところだが、Sony MUC-M12SBのユーザー評価に見受けられる「MMCX接続部分が緩めで外れやすい」などの品質上の問題も起きず、順調に稼働している。さいきん買ってよかった製品のひとつ。

 Nobunaga Labsは、電機機器製品の専門商社「ワイズテック」(本社東京)の取り扱いブランドのひとつで、2016年ころから交換用ヘッドフォンケーブルの製造販売を始めたものらしい。2017年時点でのネット上の製品評価には、あまり芳しくないものも見受けられるが、現行のKagemitsu-Sに関して悪い評価は見当たらない。

なお旧製品で「Kagemitsu景光(かげみつ)(製品番号NLP-KGM)というのがあったらしいが、現行製品Kagemitsu-S (NLP-KGM-S)との違いに関して、同社のWeb siteには何ら記載なく詳細は不明。Nobunaga LabsFacebookには「Sシリーズは銀メッキコネクタ製品」との記載あり(Jan 29, 2019付け)。ということは、新旧製品の差は、コネクター部分の銀メッキの有無だけなのかも知れぬ。なおeBayにも日本からのオッファーが出ているが、値段はAmazon Japanの倍くらいする。

私は別にケーブルに詳しいわけでもなく、また競合各社の製品と比較したこともないが、もし私と同じようにバランスケーブルが理由で、ZX300に手を出しかねている方がおられれば、という思いから小生の経験を記してみた次第。

なおKagemitsu景光(かげみつ)S(NLP-KGM-S)のスペックや、各社イヤフォンとの互換性などについては、ワイズテック社のHPを参照されたい。

(Nobunaga Labs製品一覧)

http://www.wisetech.co.jp/brand/nobunaga/

(景光(かげみつ)-S)製品詳細

http://www.wisetech.co.jp/brand/nobunaga/product/kagemitsu-s/index.html

(対応イヤフォン一覧

http://www.wisetech.co.jp/support/nlp_mmcx_diy.html

Summarey in English

Kagemitsu-S(NLP-KGM-S) Balanced Cable for Shure 846

I’ve been a fan of button operated Sony Walkman, especially ZX100, because I am not good at touch screen operation. Also on my Walkman I mainly listen to classical music from the 1950s and 1960s. It means that the quality of the sound source shows some limitation. I thought that the button-operated ZX100 was the best for me in terms of price, usability, and sound quality. I even bought a second ZX100 unit before they would run out of stock.

The Sony Walkman ZX300 is a popular product, but the need for an unfamiliar balanced cable in addition to touch panel operation made me hesitant to upgrade to ZX300. However, when I did a Google search for the Walkman last fall, "Nobunaga Labs Balanced Cable Kagemitsu-S" caught my eye. At searching on Amazon Japan I found the price didn't seem to be too high, and the user's evaluation was favorable. Also it was stated to be compatible with the Shure SE846. I thought I should give it a try.

I ordered the Kagemitsu-S cable together with a good quality used ZX300 which was on offer. It was a bit of an impulsive purchase on Amazon. The cost of the cable was: Cable at ¥ 11,573(US$110 approx.) plus ¥ 1,232 (US$12 approx.) for shipping charges. It took less than a week from ordering in late September to arrival including customs clearance. Amazon Japan’s delivery was quick.

Replacing the cable of the Shure SE846 was straight forward. But the sound of the balanced connection out of ZX300 was surprisingly similar to that of ZX100, which was disappointing.

Since the player itself is a used product, the so-called "break-in" must have been completed. This meant that it was a cable problem, and for a moment I wondered if this purchase was a mistake. Nevertheless, after about 50 hours of continuous listening for about an hour every day, the sound gradually became mellower and richer. In other words, what used to be the reproduction of recorded music has become a clearer sound that seemed as if a veil had been lifted, and the sound became closer to what you would actually hear in a concert hall. In terms of sound quality, the balance connection of ZX300 is certainly a significant upgrade over the ZX100.

The wire of the "Kagemitsu-S" is hard, and when you touch it, you can feel a rumbling sound, which might bother some people when they are moving around. However, the ZX300 is a bit heavy, and I don't think I'll be using it while walking around with it in my pocket.

It has just passed about 100 hours of use, and it's been running smoothly without any quality problems such as "the MMCX connection is loose and comes off easily," which can be seen in the user evaluation of the Sony MUC-M12SB. It's one of the best products I've bought in a while.

Nobunaga Labs is one of the brands handled by ‘’Wise Tech’’ (headquartered in Tokyo), a trading company specialized in electrical equipment products. They apparently started manufacturing and selling replacement headphone cables around 2016. As of 2017, some product reviews on the Internet were not so good, but I can't find any bad reviews on the current ‘’Kagemitsu-S’’.

It seems that there was an older product called "Kagemitsu" (NLP-KGM), but there is no information on the company's website about the differences between it and the current product "Kagemitsu-S" (NLP-KGM-S).

It is quoted on the company's Facebook that the S series is a silver-plated connector product(Jan 29, 2019). So there may not be much difference between the old and new product except for the use of silver-plated connector. There are offers from Japan on eBay, but the price is almost double of Amazon Japan.

I'm not a cable expert, nor have I compared the ZX300 with similar competitors' products, but I thought I'd write about my experience in case there are people like me who are hesitant to get their hands on the ZX300 because of the balanced cable.

For the specifications of "Kagemitsu S" (NLP-KGM-S) and compatibility with earphones of various manufacturers, please refer to the website of Wise Tech as follows.


 (Nobunaga Labs ‘’Kagemisu-S’’(NLP-KGM-S) product information)

http://nobunagalabs.com/nobunagalabs_premium/recable/kagemitsu/

(List of compatible head phones)

http://www.wisetech.co.jp/support/nlp_mmcx_diy.html


2020年12月20日日曜日

 Dec 20, 2020

スペインロマネスクの旅「番外編」

「ザ・クロイスターズ美術館」

’’The Met Cloisters Museum’’(New York)

(For the summary in English please see the end of this page)

Photo(1)

ことしは3月ころからCovia-19のため世界各地でロックダウンが始まり、私が住んでいるトロント市でも、旅行はおろか親しい友人に会うこともままならぬ状態が長く続いている。そんなことで、まだしばらくはスペインのロマネスク教会を訪ね歩く、などというのは「夢のまた夢」というのが現実。

 というわけで、今回は「スペイン・ロマネスクの旅 - 番外編」ということで、昨年9月ニューヨークの「クロイスターズ美術館」(The Met Cloisters Museum)でお目にかかった、ロマネスク建築を話題にとりあげることにした。

 同館はメトロポリタン美術館の別館で、一枚の入場券で両館を観ることができる仕組みになっている。北米では珍しくヨーロッパ中世の宗教美術に特化したこじんまりとした美術館で、ロックフェラーの資金援助を得て、新設の美術館がマンハッタンの北部ハドソン河を見下ろすFort Tyron Parkの丘に開館したのは1938年、第二次世界大戦がはじまる一年前、スペインでは各地で激しい内戦が繰り広げられているころだった。

 私が同美術館を訪ねたのは9月の暑い日だったが、Google Mapでは地下鉄のDyckman駅から500米、と出ていたのでてくてく歩きだしたところ、けっこう上り坂もあり、また途中見晴らしの良いベンチでひと休みなどしたため、結局30分くらいかかってしまった。地下鉄駅前で客待ちしていたタクシーに乗ればよかったのかな、とあとで思ったしだい。

 クロイスターズの売り物は、南フランスのロマネスク大修道院Saint-Michel-de-Cuxa(サン・ミシェル・ド・クシャ)の回廊(12世紀作)を復元したものだが、私がもうひとつ興味をそそられたのは、スペインのセゴビアから12世紀のロマネスク教会をそっくり移送したSan Martín de Fuentidueña(サン・マルティン・デ・フエンティドゥエニャ)教会を見ることだった。1950年代の半ばフランコ独裁政権と話をつけ、教会の3300個の石をひとつひとつ取りはずし、300トン近い石材をビルバオ港から船でNYまで運び組み立てたもので、企画から作業完了まで足かけ7年を要したとのこと。スペイン側の作業責任者は心労で胃潰瘍を起こしてしまったと聞いたが、いまからみればよくもそんなことが実現したな、とつくづく思う。

 Abbey of Saint-Michel-de-Cuxaサン・ミシェル・ド・クシャ修道院

クシャ大修道院は、スペイン国境に近いルション(Roussillon)地方のロマネスク教会のひとつで、創建9世紀という古い歴史をもつ大僧院。地下にはプレロマネスク様式の礼拝堂が残っている。

ルション地方は17世紀の半ばまでスペイン領であったという歴史と、人口の1/3くらいがカタルーニャ語を話すということで、カタルーニャの人たちは今でもこの一帯を「北カタルーニャ」と呼ぶ。

 フランス革命の結果、教会の取り壊しや売却が起きたとき、この由緒あるクシャ大修道員も荒廃し宗教美術品が散逸してしまった。63個あった柱頭彫刻のうち、その半分がアメリカ人の彫刻家で中世美術のコレクターでもあったバーナード(George Grey Barnard 1863-1938)の手に渡り、そのあとクロイスターズ美術館の所蔵品となったもの。

クロイスターズでは、半分の柱頭彫刻を使って四辺形の回廊を復元しているため、私が7年前にルションのクシャ修道院を訪ねたときに見た回廊に比べると、その規模はちょうど半分になっている。回廊の石材は大理石であり、潤沢な資金が投入されたことをうかがわせる。

 「フランス・ロマネスクへの旅」(中公新書)の著者池田健二氏は、この回廊について「故郷の大地から切り離された回廊には一抹の寂しさが漂う」と述べておられる。「宗教美術は祈りの場と切り離すべきではない」という議論は説得力を持つが、ていねいに復元されたロマネスク建築を手軽に北米で見られるのは、何といっても有難い。

Photo(2)

Photo(3)

Photo(4)

柱頭彫刻(Capitals)

材質は大理石だが、スペインでよく見かける粗削りの力強い彫りが特徴。絵柄は動物や人物が主体で、植物文様は少ない。 

「いったいこの絵柄は何を意味しているのか」などと深刻に考え込むより、しばらくじっと眺めているとつい笑いがこみあげてくるような、そんな気分にさせられるのがロマネスク彫刻の良さではないかと思う。

 

Photo(5)


Photo(6)


Photo(7)


Photo(8)

Photo(9)

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Photo(11)


Church of San Martin de Fuentidueña(サン・マルティン・デ・フエンティドゥエニャ教会)

フエンティドゥエニャは、セゴビア県の小さな村落(人口150人)であるが、12世紀半ばころにここに教会が建てられたものらしい。1950年代の半ばに「クロイスターズ美術館所蔵の6枚のロマネスク壁画絵と引き換え」との条件で、フエンティドゥエニャ教会を「永久貸与」することにスペイン政府」が同意したわけだが、いまから60年前のスペインではロマネスク美術への社会の関心も薄く、「何万とあるロマネスク教会のひとつぐらい」ということで、交換が実現したのだろう。

ただし石材は風化に弱い材質らしく、スペインに残された教会を囲む塀の部分は、今ではボロボロになり廃墟となっているようなので、文化財保存の観点からは、ニューヨークに移して正解だったということになる。

Photo(12)

Photo(13)

ロマネスク壁画(Spanish Romanesque wall paintings)

クロイスターズ美術館には、まだ3枚のスペインロマネスク壁画が残っていて、フエンティドゥエニャ教会の手前の廊下の壁に展示されている。

写真(14)のラクダ像は、サン・バウレリオ・デ・ベルランガ礼拝堂(San Baulelio de Berlanga)の内部を飾っていたロマネスク壁画の一枚。

ベルランガ礼拝堂は、ムスリム文化の影響を残すモサラベ様式と呼ばれる、数少ないプレ・ロマネスクの小さな聖堂であるが、内部の装飾は後代のロマネスク様式の壁画で飾られていた。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、スペインの教会のほとんどが荒廃した時期に、ベルランガ礼拝堂の壁画も散逸し、いまは各地の美術館の所蔵品となっている。

 写真(15),(16)はブルゴス県のサン・ペドロ・デ・アルランサ修道院(San Pedro de Arlanza)の壁画。アルランサ修道院は、10世紀創建の由緒ある修道院だったが、今は廃墟になっている。

Photo(14)Camel (San Baulelio de Berlanga)

Photo(15)Lion(San Pedro de Arlanza)


Photo(16)Dragon(San Pedro de Arlanza)


(Summary in English )
The Met Cloisters Museum

I visited the Met Cloisters Museum in September, 2019. The Cloisters is an annex of the Metropolitan Museum of Art and we can visit both museums with a single admission ticket. It’s a relatively small museum specialized in the medieval European religious art, which is rare in North America.

With Rockefeller’s funding the museum was opened in 1938 at Fort Tyron Park overlooking the Hudson River in north Manhattan. It was one year before the beginning of World War II, and in Spain when fierce battles of civil war were being fought.

Saint-Michel-de-Cuxa Abbey                                                                           

The Cloisters Museum is known for the 12th century Romanesque cloister of Saint-Michel-de-Cuxa Abbey in southern France. The cloister was reconstructed using half of the capitals belonging to the Abbey which were acquired by an American sculptor and art collector George Barnard in early 20th century.

Romanesque church San Martín de Fuentidueña(Segovia, Spain)

Another Romanesque architecture I was very interested to see was San Martín de Fuentidueña church, the 12th century Romanesque church from Segovia(Spain). In the mid 1950s the Met made a deal with the Franco dictatorship to get the entire church as ‘’permanent lease’’ in exchange for six Spanish Romanesque fresco wall paintings which had been in their possession.

The church's 3,300 stones were removed one by one, and nearly 300 tons of stone were transported from Bilbao port to NY to be assembled at the Cloisters. It took almost seven years from planning to completion. I heard that the person in charge at the Spanish side had a stomach ulcer due to stress.

I doubt it would be possible to achieve such a deal now, but 60 years ago in Spain there was little social interest in Romanesque art, and Spanish people might have thought "it’s one of the tens of thousands of old churches" in Spain.

The irony is that the type of stones used for the church apparently was very vulnerable to wear in Spanish environment and the wall surrounding the church which was left in Spain has now become a ruin. Consequently for the conservation of cultural properties we can say that the deal might have been an adequate one.

The Romanesque Murals

The Cloisters Museum still has three Spanish Romanesque murals on display.

The camel of photo (14) is one of the Romanesque murals that adorned the interior of the Pre-Romanesque Chapel of San Baulelio de Berlanga(Soria, Spain). The Berlanga Chapel is one of the few remaining Mozarabic style architecture in Spain. It retains the influence of Muslim culture with the interior being decorated by Romanesque murals. During the period of devastation for most of the Spanish churches in late 19th and early 20th centuries, the murals of the Berlanga Chapel were dissipated and are now in the collection of museums around the world.

Photos (15) and (16) are mural paintings of the Romanesque Monastery of San Pedro de Arlanza(Burgos, Spain). The Arlanza Monastery was a historic monastery founded in the 10th century, but is now in ruins.


2019年1月30日水曜日

Walkman物語(1) ウォークマンZX100をわが家の古いオーディオシステムに接続した話 Connecting Walkman ZX100 with my old Linn system

(For summary in English please see the end of this text)

(WalkmanがLinnにつながった)

Photo(1) Walkman connected to Linn home audio system(Linnにつながったウォークマン)


私のWalkman
カナダの友人に「さいきんはSony Walkmanで手軽に音楽を楽しんでます」と言えば、「いまどきカセットテープを使っておられるとは、珍しいですね」という反応がよく返ってくる。それくらい、デジタル・ウォークマンのカナダでの知名度はけっして高くない。それでも数年前までは、トロントの家電販売店でときどき見かけたものだが、最近は店頭から姿を消してしまった。もっともiPodも見かけなくなったので、携帯音楽プレヤーが売れなくなった、ということなんだろうか。

私が初めて買ったデジタル・ウォークマンはS754(8GB)で、今から8年ぐらい前のことだった。値段はカナダドルで100ドルくらい(一万円前後)だったと思う。
シャツのポケットに入るほど小さく、付属イヤーフォンでもオヤと思うほどの音が出るのに感心した。今でもちゃんと現役の働き者である。

Photo(2) My Walkmans 私のウォークマン

その後A856(32GB) A865(16GB)X1050(16GB)A17(64GB)A25(16GB)Aシリーズを主体に買ってきた。A865X1050は音に暖か味があり気に入ったが、タッチスクリーンが使いににくくて閉口し、おまけにX1050はずっしりと重いうえに、電池が2時間ぐらいしか持たないので、手放してしまった。


Photo(3) ZX100(128GB)

Walkman最高機種とのふれ込みでZX1が発売されたとき、当時トロントにあったSony Shopで試聴してみたが、値段もさることながら、タッチスクリーンになじめなくて、けっきょくボタン方式のA17にした。
そのときの記憶から、ZXシリーズは全てタッチスクリーンだと思い込んでいたのと、値段が高いこともあり、ZXは私の視界に入っていなかったが、さいきんZX100がボタン方式であることに気づき、また在庫も少なくなっているらしいので、急いで一台買ってみた。値段はAシリーズの倍以上するが、製品の仕上がりとぐあいといい音の厚みといい、買ってよかった一台である。なおZX100については、次回の記事であらためて取り上げる予定。

ウォークマンが、わが家のオーディオシステムにつながった
Photo(4)A17 connected to Linn Classik(Linn ClassikにつなげたA17)

1950-70年代に録音されたクラッシク音楽を中心に、CDをぼつぼつ買い込んでいるうちに、気がついたら1000枚近いものになっていた。段ボール箱に入れ、部屋のあちこちに積み重ねて保管してきたが、聴きたいCDを探し出すのにも苦労するし、とにかく場所ふさぎで困るため、数年前から少しずつRipしてはFlacファイルでパソコンに取り込み始めた。
ripしたあとのCDは、友人にさしあげたり、どこかにdonationしたりして、いまでは再生はもっぱらパソコン経由が主になっている。デジタル・オーディオへの第一歩、というところである。
一部の曲はWalkmanにも入れ、イヤーフォンで楽しんできたが、やはりわが家のオーディオ装置につなげてスピーカーを通じて聴きたい。という思いがつのってきた。
まず最初に考えたのは、ラップトップにDACをかませ、RCAケーブルでプリアンプに接続する、というものだったが、わが家のオーディオ設備は、リビングのテレビキャビネットにTVと同居しているため、リビングの雰囲気が台無しになるということで、この案は論外とされた。

ではWalkmanと小さなDACの組み合わせなら、キャビネット内に収納可能ではないかと思ったが、Walkman USBDACにつないではみたが、わが家の古いオーディオ装置(Linn)とはうまくつながらない、なんていう問題が発生しないだろうか、などなど疑問がつぎつぎ湧いてきて、あいにく手元にDACがないためテストもできず、また役に立たぬやも知れぬDACにお金を費やすわけにも、ということでこの案も足踏み状態となり、わが家の「Walkanを活用するデジタル・オーディオ」構想は、一時棚上げ状態が続いていた。

(Walkman line out cableが見つかった

Photo(5)Walkman line out cableウォークマン・ラインアウト・ケーブル

昨年の秋「WalkmanHome audioにつなぐ方法」という見出しで、いろいろネット検索していたとき、eBay ''Walkman line out cable '' なるものが売りに出ているのを発見した。商品は「WalkmanからLine outを取り出すケーブル」値段は送料こみで10ドル、売り手は香港にいるらしい。もし作動しなくても10ドルならあきらめがつく、とさっそく注文してみた。1ヶ月くらいで届いたケーブルを使い、WalkmanをおそるおそるプリアンプのAUX端子につないでみると、みごとに音が出た。

わが家のオーディオ装置は、10何年前に買った、Linn社入門レベルの Classik-Musicモデル(CDプレヤーがついたレシーバー)という古いもので、アナログ接続がメインになっている。従ってBluetoothなど無線接続はおろか、USB接続もまったく受け付けない、いまやアンティークに近いしろものである。

機器の構成は、Linn Classikをプリアンプ接続で パワーアンプLinn LK140(140W)につなげ、Linn Katan(8Ω)卓上スピーカーを鳴らす、というもの。
·                             
この組み   この組合わせでは、大編成オーケストラの演奏を勢いよく響かせるには力不足だが、澄んだきれいな音がでるので、ピアノ曲や小編成の合奏曲には向いている。
アパート住まいの身で、スピーカーの置き場は、リビングのテレビキャビネット上にしかスペースがとれないため、キャビネットの共鳴を避けるため、コルク板とパソコン用のマウスパッドを数枚重ねてサンドイッチにして、スピーカーの下に敷いてある。


Photo(6)Walkman dock cable(AUG line) オーグライン・ドックケーブル

長年の夢がかない「Walkmanを古いLinnシステムにつなぐことが出来た、やれやれ」、と喜んだのも束の間、では日本ではいったいどうなっているんだろう、とYahoo検索を始めたら、日本アマゾンで''Walkman dock cable''を見つけたことで、ケーブル探しの泥沼をかいま見ることになった。

売り手はmoon & tide社、日本製で値段は中国製の10倍くらいする。ケーブル長は50cmで、中国製の2mに比べると 1/4とずいぶん短い。
ただし商品説明を読むと、ケーブル材はオーグ合金という金・銀を含む合金で、「銀の持つ優れた電気特性と金の持つ耐酸性、伸び性を併せ持っています」ということらしい。
アマゾンの買い手コメントの中にも「確かに音がよくなった」というのがある。

もうこうなれば乗りかかった船」と、すぐさま日本アマゾンに発注し、東京の友人に転送を依頼した。手元に届いたのは年末だったが、この一ヶ月ぐらいの試聴でも、中国製に比べると音に柔らか味と深みが出てきたような感じ。そしてZX100をつなぐと、さらに元気いっぱいの音が出る。

ただ50cmはちょっと短かすぎる。AUX端子は、どのプリアンプでも背後にあるのがふつうだと思うが、ケーブルが短いとWalkmanを操作するのに苦労する。せめて、あと20cmくらいあった方が便利。そのぶん値段は高くなるんだろうが、長い目で見れば操作しやすさの利点の方がまさると思う。

もうひとつの要注意点は、2016年以降のWalkmanはアンプが変わっており、Line outがなくなっているらしいこと。従って、このケーブルはZX100までしか使えない、ということのようである。Sonyのサイトを見ても、この点について正式なコメントは見当たらないが、日本のユーザーの間では常識になっているらしい。

ともかくWalkmanLinnのドッキングが実現し、なかなかいい調子で始まった2019年の新春である。


参考)
ムーンアンドタイド(HP)
オーグラインとは
https://aug-line.com/aboutus


                                   。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

(Sumary in English)


Walkman Story(1) 

Connecting Walkman with my Linn home audio system via RCA line out cable


Photo(1)Walkman connected with my Linn home audio system using RCA line out cable


How to connect Walkman with home audio
If you do on line search about this subject, you might find a Sony's blueetooth speaker(SRS-HG1), but not much useful information on what we really want to know, i.e. ''How to connect Walkman with an old home audio system using line out RCA cable''
Looking for a good solution I spent a few months; visiting Sony’s web sites in English and in Japanese, Forums of Walkman users etc.

2 months ago I came across an offer on eBay stating ‘’Walkman line out cable’’. It was offered from HK at a price of $10 approx with freight included. 
I was not sure if it would be a good fit to my needs, but ordered it immediately, because $10 would not break the bank, if it did not work.


Photo(5)Walkman line out cable(Made in China)

My home audio system is composed of; Linn Classik-Music(receiver with a built-in CD player), Linn LK140 (140w) amp and Katan book shelf speakers. It is over 12 years old system and Linn Classik does not have any USB nor wireless connection. That's why a line out RCA cable is needed to connect my Walkman 
via AUX terminal with Linn Classik.

After one month the cable arrived. The cable worked! The sound quality seemed to be acceptable.






Photo(6)Walkman doc cable(aug-line) made in Japan



The following day I was curious about what the Japanese Walkman users had been doing to solve the Walkman connection problem with old audio system and did some quick search on line. 



An offer was found on Amazon Japan for a product ‘’Walkman doc cable’’. 

The seller was a Japanese company called ‘’moon & tide’’ and the product was a 50 cm Walkman line out cable made of a composite metal of gold and silver(named aug-line). 



The price was 10 times over made in China one, but ‘’a cable made of gold and silver’’ wow!



Since some of the users comments were favorable as well, immediately placed an order and asked one of my friends in Tokyo to transfer the parcel to me, because Amazon Japan declared not to deliver it overseas.



The cable arrived after the X’mas.
50cm cable is a little too short to operate the Walkman comfortably, but the sound comes out from Lynn system is very good. Not necessarily 10 times better, but really nice.

A note of caution
Apparently Sony redesigned the Walkman’s amplifier in 2016 and the line out was eliminated from the products such as WM1, ZX300 etc.

It means these line out cables will only be compatible with up to ZX100 which was put to the market in Oct, 2015. 
I’ve not found any official comment of Sony about this subject, but it is apparently a well known fact among Walkman users in Japan.

I’m the fan of button based operating Walkman and ZX100 is the best Walkman I’ve had. Will talk about ZX100 and the headphone amp in the next article.

(P.S.) On eBay a Japanese seller is currently offering  ‘ Dock-RCA Cable for Walkman Aug-line WM-Port Line Out From Japan ’’. It seems to be the same cable I bought through Amazon Japan direct from the manufacturer.


2018年11月30日金曜日

スペインロマネスクの旅(17)サバソナの聖フェリクス礼拝堂(Sant Feliu de Savassona)


サバソーナの聖フェリクス礼拝堂
(Sant Feliu de Savassona, 10th century hilltop chapel)
(For summary in English please see the end of this article)

バルセロナ市から北東に車で1時間くらい走ると、幹線道路をはずれた岩山の頂上に、プレロマネスクの名残をとどめる、小さな礼拝堂が見えてきます。

Ermita de Sant Feliu de Savassona(サバソーナ村の聖フェリクス礼拝堂)は、10世紀にプレロマネスク様式で建てられたもので、その後の改修でファサードなどは16世紀の様式になってしまいましたが、写真(9)の角ばった後陣などは、プレロマネスクの姿を残しています。Ermitaは、「人里はなれた礼拝堂」「隠者の庵」などを指すので、もともとは堂守か隠者が
住み着き、しだいに村人が週末の礼拝に訪れるようになったものでしょう。


(1)Hilltop chapel(10th century pre-Romanesque origin) 





岩山の標高は660mとなっていますが、元々ふもとがすでに海抜500mを越えているため、
150mくらいの岩山ということになります。
ふもと一帯が自然公園になっていて、頂上への道はまずまずのハイキング道路なんですが、とちゅう一ヶ所だけ山肌にへばりつくようにして越えていく場所があり(写真(3)、つかまるものが何もなく、うっかり足をすべらせると右側はガケなので、ひやりとさせられました。

 (2)Trail to the hilltop

 (3)Slippery pass


岩盤にちょこんと乗ったかわいらしい礼拝堂ですが、村の人たちが手作りで石を積み上げたという感じで、まったく装飾らしきものが見あたりません。ファサードは16世紀の改修で鐘楼が付け加わったりして、すっかり姿を変えてしまいましたが、うらに回ると、プレロマネスク様式に見られる四角な後陣を持つ教会であることが分かります(写真(9)。


 (4)NW view of the chapel(built on the rock)


いまは教会として機能していないので、いつも閉めたままになっているんでしょうが、正面入り口の目の高さに、中をのぞけるように小窓が刻んであります。
スペインで田舎の教会を訪ねていつも困るのは、週末のミサの時いがいには中を拝観できない教会がほとんどなので、こうやって小窓を設けてくれる配慮はありがたいですね。

 (5)Facade(with a little window on the door to see inside)


1962年に大改装をして、内装を含め現在の姿になったそうですが、礼拝堂の中は特に
目に付くものも見あたらず、やはりこの礼拝堂の見どころは、まわりを自然公園に囲まれた立地のよさと、古代からの歴史が刻み込まれた岩山、そしてプレロマネスク風の後陣かな、という気がします。

 (6)Interior(view through the little window)


(7)South view


 もともとは、この南扉が教会への入り口だったようです。

 (8)South door(original entrance)


もう10何年も前の話ですが、スペインのロマネスク教会を訪ね歩き始めたころ、後陣はみんな半円形に張り出すものだとばかり思いこんでいて、あるプレ・ロマネスク教会を訪れたら、その後陣がまるでスパッと刀で切り落としたような、角ばった形をしているのが印象的でした。

 *(9)Apse(pre-Romanesque style) - Photo courtesy of Mr. Alberto Gonzalez Rovira


岩山で水が出ないため、礼拝堂のうしろの岩を掘りぬき、雨水を貯める貯水槽が設けられています。礼拝堂の横には、同じく岩をくりぬいた墓跡もあります。

岩山のまわりは巨石の多い自然公園という地形から見て、礼拝堂はひょっとして古代の聖地跡に建てられたのでは、という気がします。このあたりは、青銅器到来のまえ(紀元前3000年くらい?)から先住民が住んでいた、という話なので、この岩山じたいが巨石信仰の対象だったり、あるいはその頂上が、キリスト教到来以前の「異教」の聖地だったりする可能性はないだろうか、という気がするわけです。
岩山を「聖フェリックスの山」と呼ぶこともあるようですが、礼拝堂が建てられる前は、土地の人は岩山を別の名前で呼んでいた、などというのはときどきある話なんですね。

(10)Rainwater reservoir


(11)Grave behind the chapel


(12)View from the hill top


礼拝堂の名前について
Sant Feliu(サン・フェリウ)はカタルーニャ語読みで、スペイン語(カスティーリャ語)ではSan Félixですが、聖フェリクスは、4世紀はじめにローマの迫害を受け、Gironaで殉教した人です。地元ではSant Feliuet(サン・フェリウエット)と呼ぶこともあるようです。
ということもあり、カタルーニャではSant Feliuの名前をつけた教会や地名(Sant Feliu de Guixolesなど)が目立ちます。


Sant Feliu de Savassona, 10th century hilltop chapel
(Summary of the article)

San Feliu de Savassona(Saint Felix of Savassona) is a tiny chapel located on a rocky hilltop in Catalonia, about an hour drive from Barcelona city. Its origin dates back to the 10th century.
In spite of changes made through the years, such as the facade added in 16th century, the apse shows  clear tradition of pre-Romanesque style.
Among many Romanesque and pre-Romanesque churches I have visited in Spain, this is one of the
memorable ones especially for the beauty of the location.

Wish to express my thanks to Alberto Gonzales Rovira for granting me to use his excellent photo of the apse.


*The photo (9)(of the apse) is the courtesy of Mr. Alberto Gonzalez Rovira.
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ermita_de_Sant_Feliu_de_Savassona-Tavernoles_(2).JPG
http://www.flickr.com/photos/112937297@N06/