2017年10月12日木曜日

スペインロマネスクの旅(16) -Zamoraから Toroへ-

サモラ(Zamora)とトロ(Toro)のロマネスク教会訪ねる旅


 Photo: サンティアゴ巡礼路の道路標識(Road sign of El Camino)


Photo(1)サモラの夕景(Bell tower & Storks, Zamora city)

サモラ県都のサモラ市は人口万人、ローマ時代にさかのぼる古い町です。
サモラを経由してスペイン西部を南北につなぐ「銀の道」は、ローマ帝国時代に整備されたものですが、いまはサンティアゴ巡礼路のひとつとしてその名を残しています。
前回と前々回にご紹介した、Santa Maria de Moreruera修道院や Santa Marta de Tera教会も、この巡礼路沿いの聖所として、中世には多くの巡礼者が詣でた場所でした。

サモラ市からポルトガル国境までは60キロ、ポートワインで有名なオポルト市は、ドゥエロ川を西に下って300キロ。道路が整備されていなかった中世には、水運によるポルトガルとの交流も多かったはずです。

Google Map(Zamora & Toro)

サモラのカテドラル(Cathedral of Zamora)

サモラに司教座が設けられたのは、10世紀初めころのようですが、現在の大聖堂は12世紀半ば頃、ロマネスク様式で建てられたものです。しかしその後のたび重なる改装により、創建時の姿をそのまま残しているのは、教会内の一部(特にドーム)と、「司教の門」と呼ばれる南門ぐらいです。
くもの巣みたいな文様の、16本のリブを備えたドームは、トロの聖堂やサラマンカの大聖堂にも共通するスタイルですが、いちど見たら忘れられない、実にユニークなものです。

 Photo(2)大聖堂入り口(Entrance of the Cathedral)


 Photo(3)主祭壇とドームの図(Main Altar & Dome)


Photo(4)ドーム(Dome)

南門(司教の門)South gate( Bishop’s gate)
「司教の門」の別名を持つカテドラルの南入り口は、12世紀半ばの創建時の姿を保っていますが、フランス・ロマネスクの強い影響を感じさせるものがあります。入り口の左右に小さなアーチ状の装飾があり、そのタンパンにあたる箇所に、聖母マリア像(右側)と聖パウロ・使徒ヨハネらしい像(左側)が彫りこんであります。

 Photo(5) 南門(South gate, ‘’Bishop’s Gate’’)


 Photo(6) 南門-右側(South gate - right side)


 Photo(7) 聖母マリアとイエス像(Saint Mary with Jesus)


 Photo(8) 南門―左側(South gate - left side)


Photo(9) 聖パウロ・使徒ヨハネ(と思われる)(Saint Paul & Apostle John)


聖マリアマグダレナ教会(Church of Saint Mary Magdalena, Zamora)

カテドラルから5分くらいの旧市街にある、聖マリアマグダレナ教会(Santa María Magdalena)は、13世紀初めころの、スペイン・ロマネスク様式がほぼ終わりかけた時期の教会です。巡礼の看護で知られる聖ヨハネ騎士団に所属していたそうですが、彫刻で埋めつくされた華やかな正面入り口が有名です。

 Photo(10) 後陣の眺め(Santa María Magdalena - Apse)


 Photo(11) 聖マリアマグダレナ教会ファサード(Facade)


 Photo(12) 正面入り口(Main gate)


Photo(13) アーキボルト拡大図(Close up of archivolt)

Zamoraの旧市街(Old city quarter of Zamora)

私たちが滞在したホテル(Parador de Zamora)は、いまでも石だたみの古い通りが残る旧市街にあり、ドゥエロ川がすぐそばに見えます。カテドラルまでは歩いて10分たらず、昔ながらのパン屋だの民芸品の店などがすこし目に付くだけで、人通りも少ない静かな界隈でした。
スペインのパラドールは、もともとは国営の高級ホテルチェーンで、その多くが中世のお城や修道院や貴族の邸宅などをホテルに改装したものでした。しかし、1991年に独立した公企業として再編されてから、すこし経営方針が変わったのでしょうか、外見はふつうのホテルと変わらないパラドールも見うけられるようになりました。私たちがサモラで泊まったのは、15世紀の貴族の館を改装した伝統的な4つ星のパラドールで、料金は一泊€80(1万円)くらいでした。

 Photo(14)ドゥエロ川を旧市街から眺めた図 (View of the Duero river)


 Photo(15) サモラ旧市街(Old street of Zamora)


                                               Photo(16) 昔ながらのパン屋(Bakery)

 Photo(17) 記念品を売る店(Souvernir shop in old city quarter)



Photo(18) パラドール入り口(Entrance of the Parador - 15th C. Mansion)


トロの町(Toro city - Collegiate Church of Santa María La Mayor)

トロ市はサモラから東に40キロ、人口9,000人くらいの町ですが、立派なロマネスク教会(サンタマリア・ラ・マイヨール教会)があることで知られています。サモラと同じくローマ時代からの古い町でもあります。

Photo(19) 教会に通じる道(View of the street to the church - Toro)

サンタマリア・ラ・マイヨール教会

教会の建設時期はサモラのカテドラルとほぼ同じころ、すなわち12世紀後半で、ピレネーの北から輸入され遅れて始まったスペインのロマネスクも、しだいに終わりに近づきつつあったころでした。サモラの大聖堂と同じく独特のドームが目に付きます。

 Photo(20) サンタマリア・ラ・マイヨール教会(Collegiate Church of Santa María  
                                La Mayor)

 Photo(21) 東面図(Apse)


 Photo(22) ドームを眺める図(View of the Dome)


 Photo(23) 南門(South Gate)


 Photo(24) 教会内部(Church – interior)


Photo(25) ドーム(Dome - inside)


 Photo(26) *北門(North Gate) 

「栄光の門」の別名を持つ西門(West gate – ‘’Puerta de la Majestad’’)           サンタマリア・ラ・マイヨール教会の西門は華やな彫刻で埋まっていますが、13世紀末のゴシック時代のものです。

Photo(27)ゴシック様式の西門(West gate - Gothic style of late 13th C.)


ドゥエロ川(View of the Duero river)

サンタマリア・ラ・マイヨール教会に面した広場は高台になっていて、
そこから見下ろすドゥエロ川の展望は見事です。画面のまんなかに見えるのが中世からの「トロの大橋」ですが、「ローマの橋」と呼ばれることもあるのは、ローマ時代に木製の橋でもかかっていたからでしょうか。
トロは小さいながら、なかなか味わいのある町でした。


 Photo(28) 教会前広場からの展望(View of the Duero river)


 Photo(29) ドゥエロ川にかかる「トロの大橋」(Medieval stone bridge on the Duero river)


Photo(30) 道端をいろどるヒナゲシの花(Amapola flower)

*The photo(26) of the North Gate is courtesy of Mr. José Luis Filpo Cabana of Spain