2008年1月7日月曜日
アンダルシアのオリーブ畑 - (1)
Town of Cazorla
昨年の4月初めに、オリーブオイルの産地として知られる南スペインのハエン県を訪ねました。首都のハエン(Jaen)市まではグラナダから北に100km足 らず、そしてそこから更に100キロばかり東にある避暑地のカソーラ(Cazorla)の町に泊まって、周辺をドライブして回ったわけです。カソーラは人 口1万人足らずの町ですが、軽井沢並みの海抜800米ぐらいの高地なので、夏場は40度にも達する南スペインの暑さを逃れる避暑客で大変混雑するそうで す。でも私達が訪ねたのはイースター休暇の時期で、ホテルは結構混んでいましたが、道路が混むようなことはなくて助かりました。
グラナダ の飛行場でレンタカーをして、ハエン市に向けて北上し始めると、もうすぐ道路の両側はオリーブ畑となり、あとは行けども行けども緑一色のオリーブの木ばかりです。
Olive field in Jaen
ハエン県には6,000万本のオリーブの木があるという話です。まさか一本一本数えたわけでもないでしょうが、とにかくオリーブ畑から日が昇り、 そしてオリーブ畑に日が沈む、というのが実感になります。
たまに近道をしようとして細い農道を通り抜けたりすると、まるでオリーブの木のトンネルを抜けているような感じで、濃い緑色のオリーブの枝が両側から車に覆いかぶさって来て視界を遮ります。4日間も同じことを続けていると、目を閉じてもオリーブの木にとり囲まれた夢を見るという始末で、もうすっかり船酔いならぬ、「オリーブ酔い」という気分になってしまいました。
オリーブの木は植えてから8年ぐらいで実が採れるようになり、樹齢35-40年くらいがピークで、あとは次第に老齢化して70-80年でもう実は採れなくなるそうです。何だか人間の寿命みたいです。
お天気の方は、もともと雨が少ない地方の筈なのに、どういうわけか連日の雨に祟られて、望遠レンズまで付けて2台も持ってきたカメラを取り出すチャンスもありません。
Jaen in the rain
しばらく行くと、車のはるか右斜め前方の山の中腹あたりに、白壁の家が固まって、雛壇のように山肌からせり出している村が見えてきました。それにベールを被せたような霧が掛かっていて、まるで話しに聞いた桃源郷のような風景だったのですが、残念ながらそれもただ土砂降りの雨の車窓から眺めるだけで、あっという間に通り過ぎてしまいました。チャーチルの肖像写真などで世界的に有名な、カナダの写真家ユースフ・カーシュが、「私の本当の傑作は、私の記憶にしかない写真である」という意味のことを言っています。「逃がした魚はいつも大きい」というのは、釣り人だけの嘆きではなさそうです。
Baeza - Semana Santa
ハエン市から東に50キロぐらい、時間にして45分ばかり走るとバエサ(Baeza)の町に着きます。お隣のウベダ(Ubeda)と併せて5年前に世界文化遺産に登録されましたので、観光案内書などにも載っているかと思います。バエサは人口2万人足らずのこじんまりした町ですが、ローマ時代からの歴史を持つ古い町で、南スペインには珍しいロマネスクの教会があったりして、いまでも中世の雰囲気を残すなかなか味のある町です。
私達がバエサを訪ねた日もあいにくの雨模様のお天気で、地元の人たちは南スペインでは大事な年中行事である、イースター(Semana Santa)の行列が台無しになるのでは、と心配そうな表情で熱心にTVの天気予報を見つめていました。聞いてみるともう一年も前から準備を始めていて、鼓笛隊はじめ関係者はみんなリハーサルも済ませているので、何とか行列が出る時間だけでも雨が止んで欲しい、と真剣な表情です。
Paso entering the Cathedral of Baeza
カテドラルの入り口に人だかりがしていたので近寄ってみると、行列に使う山車(スペイン語では’’Paso’’)を大聖堂に持ち込み、マリア像をお載せする準備が始まるらしいと分りました。雨除けの大きなビニール袋で覆った山車が着いたのでカメラを構えたら、隣りに立っていた老人が私の手を押さえて「一寸待て」という合図をしました。写真を撮ってはいけないのかなと一瞬思ったら、どうも未だタイミングが早すぎる、と言うことらしいのです。山車がカテドラルの入り口に半分ぐらい運び込まれたところで、包んであった布とビニールのカバーを少し外して、ほんの一瞬だけ山車の素肌を披露するというわけです。ちょうど踊り子がスカートを一寸つまんで持ち上げる、という感じです。
あっという間に山車はカテドラルの中に運び込まれてしまいましたが、銀細工を周りに張り詰めた実に立派なものでした。隣の老人は私の顔を見て「撮れたか?」と聞いてきましたので、デジカメの再生で画面を見せてあげたら、ウンウンとうなずいて満足そうでした。見知らぬ観光客にもこうやって声を掛けてくれるのが、南スペインの旅の良さです。
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