2007年11月1日木曜日

ブロッグ開設のご挨拶

スペインはむかし住んだことがあって少しは土地勘もあり、スペインに関してはある程度のことは知っていると自分では思い込んでいました。
ところが、今年の春グラナダの近くに住むスペインの友人を訪ねたおり、「近くに詩人のガルシーア・ロルカの墓があるけど見て行かないか」と言われて、松林の中にある質素な共同墓地に案内された時に私のよく知らないスペインが目の前にある、という感じがしました。
いや、もっと正確に言えば、私がこれまでは何となく気が重くてわざと目をそらせて来た内戦前後のスペインの歴史が、そこに埋まっているという感じでした。
その友人の話では、内戦の混乱にまぎれて確かな記録も残っておらず、果たしてその共同墓地にロルカの遺体があるのかどうか、DNA鑑定でもしなければ誰にも分らないとのことでした。
  
グラナダに出掛ける前に、偶然バルセロナで「戦争のニュース」というスペイン内戦前後のラジオニュースを編集したセミドキュメンタリー映画を見る機会があり、ロルカが殺された頃のスペインの左右激突の社会情勢が記憶にあったので、簡素な石の墓標に「ロルカだった、みんな」という墓碑銘が刻み込んである背景が、少しは理解できるような気がしたのでした。

それに加えて、グラナダの旅からバルセロナへ戻った頃に、「二十歳の戦争」という、共和国軍の一兵士としてテルエルの戦闘に参加した元大学教授の回想録を入手する機会があったりして、あれやこれやで今年になってから、「どうもスペイン内戦の歴史に引き寄せられているな」、という感じが強くするようになりました。

私はロマネスクの教会が好きで、これまでバルセロナの近辺で見かけるたびにその写真を撮って来ました。これらのロマネスクの教会はその千年近くの歴史の間に、きっと色々と血塗られた歴史も見て来たのには違いないでしょうが、カメラを通して覗くと今は苔むした佇まいしか目に付かず、ひんやりとした教会の中に一歩入ると、中は本当に静かで心の休まる思いがします。しかしスペイン内戦の歴史は、70年たった今日でもまだちょっと血の匂いが付き纏うような感じで、落ち着いてロルカの墓にカメラを向けるのは難しくて、シャッターを押すのをためらってしまいました。

このブロッグ開設を思い立ったのは、「二十歳の戦争」(La guerra a los 20 años)という、実にユニークな内戦の回想録を紹介したいと考えたことと、それを読み進むうちにスペイン内戦の歴史について私が学んだことや、今でも疑問に思っている事をいろいろ述べてみたいと考えたからです。そしてその合間に、私が訪れたカタルーニャ地方のロマネスクの教会などを、気軽に写真をまじえて紹介して行きたいと思っています。
  
歴史学の素養のない者が書くことゆえ、かなり大雑把な発言が多いとは思いますが、もし同好の士がおられるならば忌憚のないご意見をお伺いしたいと願っていますし、又もしも先達の方からのご教示が得られるならば誠に幸いです。