Sant Pau del Camp教会
バルセロナ市の周辺にはロマネスク様式の教会が沢山ありますが、私がついカメラを向けたくなってしまうのは、11世紀から12世紀頃にかけて、ロマネスクの教会が各地にたくさん建てられた頃の雰囲気を今でも窺がわせて呉れる、質素でしかも小さな鄙びた教会です。そんな教会のいくつかを私のアルバムの中から拾ってご紹介してみようと思います。
Cloister of 13th century
まず第一回目は、バルセロナ市内にあるSant Pau del Camp教会です。
この教会は観光案内書にも載っていますので、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、観光客でいつもごった返しているRambla通りから、西の方角に向かって10分くらい歩いた住宅地域にあります。
教会の名前はカタルーニャ語で「町外れの聖パウロ教会」という意味です。当初は修道院としてバルセロナ旧市街の城壁の外、つまり町はずれに建てられた為、それが呼び名に結びついたものでしょう。今ではアパートがびっしり立ち並んでいる教会の周辺も、その当時は一面に麦畑だったり、放し飼いの羊が群れていた人里離れた場所でした。今は目抜き通りになっているRamblaも、その頃は川だったそうです。
この教会の特徴は、バルセロナ市内では数少ないロマネスク様式を保つ古い教会だということ、それに加えて、今でも市民のための教会として活動を続けているということです。私の友人の一人も、むかしこの教会で結婚式を挙げました。
Cloister
この回廊の写真は今から7年前に撮ったものです。
Sant Pau del Camp教会はその頃は一般公開の時間がごく限られていて、訪ねても中に入れないことがよくありました。その日はちょうど10人くらいの年配の信者相手にミサが始まったところでしたが、この教会の見どころは回廊(13世紀の作)なので、すぐ忍び足で右横の扉をくぐり回廊に出て何枚か写真を撮りました。
回廊の内側は飾りに植木鉢がいくつか置いてあるだけの実に質素なもので、当時は観光に訪れる人も少なく、カメラのシャッター音と自分の靴音が気になるほど、実に静かな雰囲気でした。
ことしの春久しぶりで訪ねた時には、観光客用の入り口が新設されいつでも回廊を見ることが出来るようになっていました。ただし、入場料を取られるのはいいとして、あの質素な回廊の内側がまぶしいほど真っ白な割り石で一面に覆われ、石畳が見えなくなっていたのには驚きました。太陽光線にぎらぎら輝く割り石の床は、薄暗い回廊の雰囲気にそぐわなように思いますが、いったい誰が考えついたことなんでしょう。その意味では、私の古いデジカメ(Canon G2)の写真にも歴史的な価値があると思っています。
その起源を10世紀頃にまで遡る古い歴史を持つSant Pau del Camp教会は、バルセロナ市内で手っ取り早くロマネスク教会を見るには便利な場所です。