2007年12月1日土曜日

カタルーニャのロマネスク教会-(1)

Sant Pau del Camp教会



バルセロナ市の周辺にはロマネスク様式の教会が沢山ありますが、私がついカメラを向けたくなってしまうのは、11世紀から12世紀頃にかけて、ロマネスクの教会が各地にたくさん建てられた頃の雰囲気を今でも窺がわせて呉れる、質素でしかも小さな鄙びた教会です。そんな教会のいくつかを私のアルバムの中から拾ってご紹介してみようと思います。


Cloister of 13th century




まず第一回目は、バルセロナ市内にあるSant Pau del Camp教会です。
この教会は観光案内書にも載っていますので、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、観光客でいつもごった返しているRambla通りから、西の方角に向かって10分くらい歩いた住宅地域にあります。
教会の名前はカタルーニャ語で「町外れの聖パウロ教会」という意味です。当初は修道院としてバルセロナ旧市街の城壁の外、つまり町はずれに建てられた為、それが呼び名に結びついたものでしょう。今ではアパートがびっしり立ち並んでいる教会の周辺も、その当時は一面に麦畑だったり、放し飼いの羊が群れていた人里離れた場所でした。今は目抜き通りになっているRamblaも、その頃は川だったそうです。

この教会の特徴は、バルセロナ市内では数少ないロマネスク様式を保つ古い教会だということ、それに加えて、今でも市民のための教会として活動を続けているということです。私の友人の一人も、むかしこの教会で結婚式を挙げました。


Cloister

この回廊の写真は今から7年前に撮ったものです。
Sant Pau del Camp教会はその頃は一般公開の時間がごく限られていて、訪ねても中に入れないことがよくありました。その日はちょうど10人くらいの年配の信者相手にミサが始まったところでしたが、この教会の見どころは回廊(13世紀の作)なので、すぐ忍び足で右横の扉をくぐり回廊に出て何枚か写真を撮りました。
回廊の内側は飾りに植木鉢がいくつか置いてあるだけの実に質素なもので、当時は観光に訪れる人も少なく、カメラのシャッター音と自分の靴音が気になるほど、実に静かな雰囲気でした。

ことしの春久しぶりで訪ねた時には、観光客用の入り口が新設されいつでも回廊を見ることが出来るようになっていました。ただし、入場料を取られるのはいいとして、あの質素な回廊の内側がまぶしいほど真っ白な割り石で一面に覆われ、石畳が見えなくなっていたのには驚きました。太陽光線にぎらぎら輝く割り石の床は、薄暗い回廊の雰囲気にそぐわなように思いますが、いったい誰が考えついたことなんでしょう。その意味では、私の古いデジカメ(Canon G2)の写真にも歴史的な価値があると思っています。

その起源を10世紀頃にまで遡る古い歴史を持つSant Pau del Camp教会は、バルセロナ市内で手っ取り早くロマネスク教会を見るには便利な場所です。

2007年11月1日木曜日

ブロッグ開設のご挨拶

スペインはむかし住んだことがあって少しは土地勘もあり、スペインに関してはある程度のことは知っていると自分では思い込んでいました。
ところが、今年の春グラナダの近くに住むスペインの友人を訪ねたおり、「近くに詩人のガルシーア・ロルカの墓があるけど見て行かないか」と言われて、松林の中にある質素な共同墓地に案内された時に私のよく知らないスペインが目の前にある、という感じがしました。
いや、もっと正確に言えば、私がこれまでは何となく気が重くてわざと目をそらせて来た内戦前後のスペインの歴史が、そこに埋まっているという感じでした。
その友人の話では、内戦の混乱にまぎれて確かな記録も残っておらず、果たしてその共同墓地にロルカの遺体があるのかどうか、DNA鑑定でもしなければ誰にも分らないとのことでした。
  
グラナダに出掛ける前に、偶然バルセロナで「戦争のニュース」というスペイン内戦前後のラジオニュースを編集したセミドキュメンタリー映画を見る機会があり、ロルカが殺された頃のスペインの左右激突の社会情勢が記憶にあったので、簡素な石の墓標に「ロルカだった、みんな」という墓碑銘が刻み込んである背景が、少しは理解できるような気がしたのでした。

それに加えて、グラナダの旅からバルセロナへ戻った頃に、「二十歳の戦争」という、共和国軍の一兵士としてテルエルの戦闘に参加した元大学教授の回想録を入手する機会があったりして、あれやこれやで今年になってから、「どうもスペイン内戦の歴史に引き寄せられているな」、という感じが強くするようになりました。

私はロマネスクの教会が好きで、これまでバルセロナの近辺で見かけるたびにその写真を撮って来ました。これらのロマネスクの教会はその千年近くの歴史の間に、きっと色々と血塗られた歴史も見て来たのには違いないでしょうが、カメラを通して覗くと今は苔むした佇まいしか目に付かず、ひんやりとした教会の中に一歩入ると、中は本当に静かで心の休まる思いがします。しかしスペイン内戦の歴史は、70年たった今日でもまだちょっと血の匂いが付き纏うような感じで、落ち着いてロルカの墓にカメラを向けるのは難しくて、シャッターを押すのをためらってしまいました。

このブロッグ開設を思い立ったのは、「二十歳の戦争」(La guerra a los 20 años)という、実にユニークな内戦の回想録を紹介したいと考えたことと、それを読み進むうちにスペイン内戦の歴史について私が学んだことや、今でも疑問に思っている事をいろいろ述べてみたいと考えたからです。そしてその合間に、私が訪れたカタルーニャ地方のロマネスクの教会などを、気軽に写真をまじえて紹介して行きたいと思っています。
  
歴史学の素養のない者が書くことゆえ、かなり大雑把な発言が多いとは思いますが、もし同好の士がおられるならば忌憚のないご意見をお伺いしたいと願っていますし、又もしも先達の方からのご教示が得られるならば誠に幸いです。